 私がギターにのめり込んだきっかけは、師匠でもあるカントリー・ブルースギターの巨匠、ステファン・グロスマンです。ステファンは、フォーク・リバイバル以降見直された黒人カントリー・ブルースのフィンガースタイルを、当時画期的なタブ譜付きレコードを通して1970年代に世に広めた功労者です。彼の活動のおかげで、それまでに主に伴奏楽器だったアコースティック・ギターが、ベース・リズム・メロディを一人で奏でるフィンガースタイル・ギター・ミュージックへと発展を遂げました。私は19歳の時にステファンのLPに出会って依頼、ずっと今日までフィンガーピッキング一筋でやってきました。
日本でも、長い間フォークソングの伴奏楽器というイメージで捉えられてきたアコースティック・ギターですが、独自の可能性を持つソロ楽器としてのアコースティックギターの魅力が年々見直されてきています。ブルース、ラグタイム、スタンダード、ニュー・エイジ・ミュージック…１本のギターで本当にいろんなことができるのです。 オープン・ハイ・コードや変則チューニングでの独特な深い響き、チョーキングやボトルネック・スライド奏法における微妙な音使い、ハーモニックスの美しさ、表現力豊かで人間味あふれる楽器だと言えるでしょう。ソロ・パフォーマンスで代表的なクラシック・ギターがありますが、クラシックとはまた違った歴史とアプローチを持つ、アコースティック・ギターの素晴らしさをより多くの人に知っていただければと思います。そして、そんなアコースティック・ギターを通して自分の気持ちを表現できたら、あるいは、その音色に自分が酔いしれることができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。 アコースティック・ギタリスト 打田十紀夫（プロフィール） |
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